小説NO.2 約束約束初めてあなたと出会ったのは2年前の秋だった。 ひとりグランドで、白球を追うあなたの汗が、 秋の夕日に輝いていた。 私は、なんとなく足を止めた。 次の日、あなたの噂を聞いた。 この夏叶わなかった夢が、あなたを一人にしたのだと・・・ その日から、私はあなたが気になって 毎日木陰から見つめるようになった。 そして、数ヵ月が過ぎ・・・夏が来た。 テレビに映るあなたは、真っ黒に日焼けして 一回り大きくなったような気がした。 割れるようなスタンドの声援・・・ あなたの夏が終わった。 何日かして、グランドに立たずむあなたに会った。 「おめでとう。」 あなたにかけた最初の言葉だった。 「君のおかげだ。」 意外な言葉に私はとまどった。 「ずっと見ていてくれたね。君は、僕の支えだった。 これからも、そばにいてほしい。」 涙がこぼれた。 そして、あなたの腕が私を抱いた。 「キスしてもいい?」 うつむいた私の顔を、そっと両手で挟んで あなたは、優しく唇を重ねた。 「ありがとう。ずっと君とこうなりたいと思っていた。」 私も、同じ気持ちだった。 「あなたが、好きです。」 素直に言えた。 あれから、一年。 私たちは、卒業しそれぞれの道を選んだ。 あなたは大学生、私は社会人になった。 私たちの回りは、あわただしく変わっていく。 でも、私たちは変わらなかった。 そして、二度目の秋。 私は19才の誕生日を迎えた。 「誕生日おめでとう。今日は、君にプレゼントがあるんだ。」 そう言って、あなたは小さな箱を差し出した。 「開けてごらん。」 そう言われて、私はリボンをほどいた。 箱を開けると、光るものが見えた。 「これ・・・」 私の言葉に重ねるように、あなたは言葉を続けた。 「まだ本物は買えないけれど、君に僕の気持ちを贈りたかった。 プロミスリングだ。」 私の手をとり、あなたはリングをはめてくれた。 驚きと喜びでずっと指を見つめていた私。 あなたの気持ちに応えたい・・・そう思った。 そして、その日・・・ 何度も尋ねたあなたの部屋。 セミダブルのベッドに腰掛けていつもおしゃべりした。 でも・・・今日は違う。 隣に座るあなたが、大人びて見える。 肩を抱かれ、キスをした。 長く・・・深く・・・あなたの息づかいを感じる。 あなたの手が私の胸を触る。 最初はそっと・・・ でも、少しずつ強くなってくる。 そして、ボタンを外しあなたの手が入ってきた。 直接、肌に触れる手に私は少し身体を引いた。 耳もとで、あなたのささやく声がした。 「後悔しないね・・・」 私は答える代わりに、そのままベッドに横たわり目を閉じた。 しかし、初めての二人にとって、それはスムーズにはいかなかった。 「あなたとひとつになりたい・・・」 その思いで私は痛みに耐えていた。 どのくらいの時間が過ぎたのか・・・ あなたは、私から離れて言った。 「ありがとう。」 あなたと結ばれた・・・ そう思うと涙が頬をつたった。 あなたは、私に腕枕をしながら髪を撫でていた。 そして、私が泣きやんだころゆっくり話し始めた。 「本当は少ししか入らなかったんだ。僕も少し痛かった。 君の辛そうな顔を見ていると無理に入れることはできなかった。」 あなたとひとつになれたと思っていた私は、 思いもよらないあなたの言葉にうつむいた。 「ごめんなさい。」 それしか言えなかった。 「いいんだ。君の気持ちだけで十分だから。 君のほうこそ痛かっただろう。 僕に経験があれば、もっと楽だったかも知れない。」 何も言えなかった。 あなたの優しさが嬉しかった。 私たちはひとつになれたんだ。 素直にそう思えた。 痛みが幸せに変わっていく。 あなたの胸に顔をうずめ、鼓動を聞いた。 あったかい・・・ いつまでもこうしていたい・・・ あなたは私の手を握り、指のリングにキスをした。 永遠の約束・・・ プロミスリングに・・・ 完 ジャンル別一覧
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